試食販売や実演販売をする際に、店舗スタッフがいくら声を張り上げても、どんなに商品説明が上手でも、なかなかお客様に商品を手に取ってもらうことができません。
どうすればお客様を立ち止まらせ、商品を手に取り、購買へと誘導することができるのでしょうか?
それはスタッフの力量だけではどうすることもできません。周りのお客様にも販売に協力してもらうのです。ではその方法は?
試食販売で売上を効果的にあげる方法
スーパ—でよくみかけるのは試食販売。
元気な女性の店員が、ソーセ—ジをプライパンで焼いて、爪楊枝でブスリとさしながら「お客様〜いかがですか〜おいしいですよ〜どうぞ〜」と、言って焼きたてのソ—セージを勧めていました。試食はしてくれますが、商品がまるで売れません。
途方に暮れながら続けていたとき、子どもが店員のまわりに群がって、ソ—セージをねだりだしました。
そこに、子供の母親らしき人たちも数名接近してきました。店員はチャンスだと思いました。
「いかがですか〜」と焼き立てのソーセージを差し出すと、母親らしきが手を伸ばしてソーセ—ジをパクリと食べてくれました。
すかさず店員は「本日、たいへんお買い得になっているんです」と笑顔でセールスします。
でも、母親らしき人は何事もなかったように、その場を去ってしまいました。
- この店員の改善点は、お客様に「必ず、質問をする」こと。
子供にソーセージを渡したら「ぼく、おいしい?」と質問してみる。
母親らしき人がバクリとしたら「奥様、おいしいですか?」と尋ねる。
そこで’子供や母親が「おいしい!」「おいしい!」と言ってくれたら、大成功です。販売力が一気にアップします。
なぜなら店員が「おいしいですよ〜」と何百回言うよりも、お客様の「おいしい」という一言の方が、断然、説得力があるのですから。
さらに試食してくれたお客様の「おいしい」という声が、周囲のお客様の耳に届けばさらに大成功です。「おいしい」「おいしい」という声につられて、まわりのお客様も「わたしも食べてみたい!」という気持ちに火がつくからです。
やがて店員のまわりに人が集まってくるはず。その後は、店員さんのスマイルとプレゼンが勝負となります。
試食販売と実演販売の接客は「学校の先生」がお手本
生徒をまとめ、メリハリをつけながら授業を進める「ベテラン教師」をはじめ「テレビの司会者」も、販売員にとっては、よい手本です。実に、学ぶことが多いのです。
試食販売をする店員のまわりにお客様がどんどん集まってきました。
さぁ忙しくなってきたら、商品のソーセージを焼くのに必死になってしまいます。
そういう状況になっても落ち着いて笑顔を忘れず 「お客様、ちょっとだけ待って。2分もあれば、焼けますから。それまでちょっとだけ私の話を聞いて頂戴!」と呼びかければ、お客様も店員に注目してくれます。
続けて「実はおいしいのにはわけがあるんですよ。そこの、試食してくれた奥様、感想を一言どうぞ!」と一人のお客様に向かって質問をします。
「プリプリでジューシー」と答えたらすかさず「そうでしょう!だって国内産の黒豚だもん!だからおいしいの!」と商品の特長をPRしましょう。
興味を持ったお客様が、次に気になるのは「価格」です。それを感じたらすかさずお客様全員に「いくらだと思いますか?」と問いかけてみましょう。
反応が鈍いようなら一人のお客様を指名して「そこの、きれいな奥様!いくらなら買ってもいいと思いますか?」と質問し、3名ぐらいに聞いていきます。
そこで店員は全員に語りかけます。「みなさん、1000円でも高いと思いませんか?」お客様はみんなウン、ウン頷いて同意してくれるはず。そこで「じゃあ600 円ならば、買ってもいい、というお客様。ちょっと手をあげてちょうだい!手をあげてくれたら3個まで試食OKよ!」その場にいたお客様が一斉に手をあげるはずです。
つまり、ここでお客様の購入意志を確認したということです。最後に購入を後押しする決めセリフを言います。「実は、本日限り600円です」。
そうなると近くのお客様から商品に興味を示して手を伸ばしだします。この段階でも声掛けをやめてはいけません。お客様の購買意欲をさらに煽るように続けます。
「商品はここにあるだけ。ごめんなさい! おひとり様3袋までよ」。
試食販売コーナーは商品の奪い合いになるでしょう。
このように商品に興味を持たないお客様を目の前にしながら「質問したり」「共感させたり」「同意を求めたり」「考えさせたり」「納得させたり」「確認したり」「緊張を与えたり」しながら、お客様と会話を展開するのです。時には販売員自らの自問自答によって、クロ—ジングに導く。これができたら、商品の完売も簡単です。
一期一会のお客様と仲良くなる秘訣は「同じこと」してもらうこと
恋人と仲良くなるための秘訣は、行動を共にすること、相手と同じことをすることです。
それを繰り返していくことによって、こころが通い合い、ますます好きになって、あわよくば、結婚となります。
これを接客にも応用することができます。
お客様にも、販売員と「同じこと」をしていただくことで、お客様と心が通い合い、仲良くなれることは確かです。
例えば、包丁の実演販売をイメージしてください。販売員であるあなたは、1本でも包丁を多く販売したい、完売させたいとやる気になっていることでしょう。
そのやる気のあまり販売員であるあなただけが、キャベツの千切りに夢中になっていませんか?
それでは意味がありません。お客様はその包丁よりも「販売員の包丁さばきの上手さ」に関心がいってしまい、肝心の商品である包丁に興味を持ってくれません。
だからあなたがキャベツを千切りにしたら、今度は「お客様もどうそ」と誘って、キャベツの千切りをさせるのです。
「どうですか?私が言ったことは嘘じゃないでしょ?この包丁は切れ味が抜群にいいでしょ!」と語ってあげます。
そうすれば、お客様も「わぁ、本当だ」と納得した表情を見せてくれます。
できればあなたとお客様二人で一緒にキャベツを千切りしましょう。さらに仲良くなれます。共演してくれたお客様との仲だけでなく、周囲で見ているお客様との距離も、グッと縮まります。
お客様と仲良くなり、販売力をアップさせたいなら「どうぞ、やってみませんか」と誘って、販売員と同じ行為をお客様にもやってもらいましょう。
以上「売りにくい商品で完売を狙うなら、お客様にも「販売」に協力してもらうこと」でした。