どんな小さな店舗でも、自らが決めたルールがあります。それは経営をはじめてから、今までに至るまで様々なことを経験し、試行錯誤しながら決めてきたルールです。
だから自分たちの仕事を、誰もが確実にスムーズに進めるために重要なものです。
しかし勘違いしないでほしいのは、それは店舗で働く自分たちで守っていればいいのであって、お客様を巻き込む問題ではありません。
自分たちの決めごとをお客様に押し付けない
セルフサービスのコーヒーショップで、小さなテーブルを返却口と間違えて食器を置いた高齢者がいました。
すると、「恐れ入ります。こちらにお戻しください」と「正しい」返却口から返すように声をかけた従業員がいます。
また、万引き防止のために入口と出口を分けた書店で、出口から入ってしまった中年男性がいました。ちょうど人が出てきたところだったので、出入り口だと勘違いして入ってしまったのです。
「すみません。こちら出口なので入口にお回りください」とレジカウンターからこの男性に声がかかります。
もしあなたがこのお客様の立場だったとしたら、どのように感じるでしょうか? なんだか悪いことをしたみたいで、いたたまれなくなりませんか? 他のお客様に見られて恥ずかしいと思ってしまうのではないですか?
どちらも、訪れた店舗に慣れていないお客様だからこそ間違えることで、わかりにくい表示をしている店側にも落ち度があるでしょう。はじめて来店してくれたお客様を嫌な気持ちにさせては、二度と来店してくれません。
そもそも、お客様に「やり直し」を求めなくてはならないほどのことでしょうか。
店舗のルールは大切だと思いますが、他の方法が全くないのか? これはその店舗で働く従業員がもっと考えなければなりません。
上記のような対応をする店員は、接客用の言葉は丁寧に使っていても、自己都合で注意しているだけで、やり直しを求められたお客様の気持ちなど想像できないと思います。
たとえ、コンビニのようなフランチャイズであろうとも、お客様に商品を買っていただき、その結果としての儲けがある以上、お客様の期待に応えるということを第一に考え、そのスキルを磨く必要性かあります。
サービス次第で、お客様から選ばれもするし、捨てられもするのだということを、もう一度認識しなくてはなりません。
お店の決めごとを守るあまり、お客様の気持ちを損ねていないか? お客様の気持ちを感じとってみてください。
接客サービスの押し売りはやめなさい
一言で「お客様商売」といっても、現場の人間の意識には、驚くほどの差があります。
同じコンビニで働いていても、「その態度、なんとかならないの?」と思える人もいれば、「気持ちのいい店員さんだなあ」と思える人もいます。
サービスは過剰になると逆にお客様を不快にする
サービスマインドに欠けた人がサービス業につくのは悲劇ですが、サービスしたくてたまらないタイプも、気をつけないとお客様からうっとうしがられてしまいます。
たとえば、レストランでお客様が途中で席を立つのは、だいたいお手洗いに行かれるときです。だからお客様が立って、どこか場所を探しているように歩きはじめたら、さりげなくお手洗いの場所をご案内するのは必須です。
慣れない店でお手洗いを探してうろうろするのは、お客様も絶対にいやでしょうから、さりげなく案内すると喜ばれます。
言葉にされなくても、「ありがとう。気が利くわね」という表情をしてくださいます。
しかし、これもさりげなくやるからこそ喜ばれることで、ちょっとお客様が立つ気配を見せただけで週剰に反応したり、大袈裟な身振りで工スコー卜したりすれば、「うっとうしい」と思われるだけです。
本当のサービスとは、サービスしていることを見せず、感じさせずにするもの
週剰なサービスをしがちな人は、そもそもスタンドプレーが好きなのです。従業員もだんだんと仕事に慣れてくると「私の客」という発想を持ちがちになります。「お客様は、私のサービスが好きで、この店に来てくれる」「私がいるから、お客様が増えて、この店は回っている」などと思うようになります。やがて、「私にはお客様がたくさんついているから成功する」と独立するケースが多いのですが、こういう人は独立してもだいたい失敗します。
一つには、自分が勝手に思いこんでいただけで、そのお客様は店員個人ではなく店のファンになっていたのです。
店がいい店だから、いいお客様が大勢いて、偶然に素晴らしいお客様にサービスができていただけだということです。
そして、もう一つには「私の客」という奢った発想が、気づかぬうちにお客様に伝わっているのだということです。
そこには、すでに、「お客様に喜んでいただこう」という発想はありません。「お客様に僕の役に立ってもらおう」という発想になっているわけです。
お客様は敏感です。こちらが想像している以上にすべて見抜いている!
サービス業に限らす、仕事をしている人が忘れてはならない大事なことは、お客様、取引先やクライアントに対して、「あの人は私のお客」と思わないようにすることです。
たとえ、あなたのサービスがお客様の気持ちをよくし、お店の売上にどんなに大きく貢献したとしても、「私のお客」と考えた時点で台無しになってしまいます。
そもそも、「私のお客」と思っていたその人は、間違いなく店舗のお客様なのです。店舗の接客担当だから、大事にしてくれているということであって、個人を評価しているのではないと、謙虚な姿勢を保つようにしましょう。その姿勢がお客様に喜ばれるサービスを生みだすものなのです。
以上「店舗のルールをお客様に適応してはならない!その場の状況判断が重要」でした。