店舗の営業中には実に様々なお客様が来店されます。そのお客様一人ひとりに丁寧な接客をするのが商売の基本ですが、お客様の要望次第で態度を変える経営者や店舗スタッフが中には存在します。
「お客様からの厳しい言葉」「難しい要望」についてあなたはどのように考えていますか?
「あなたの店の店舗スタッフ、もっとちゃんと教育しなさいよ」
もしこのような電話がお店にかかってきて、一方的に電話を切られてしまったとしたら、あなたはどう思うでしょうか?
単に「なんて客だ!もう二度と来店するな!」と逆ギレしてしまうタイプですか?もしそうだとしたら、あなたの経営する店は近いうちに廃業に追い込まれるかもしれません。
お客様から直接クレームを言われることは、とてもありがたいことです。
クレームを言うお客様にとっても決して愉快なことではないのに、わざわざ「口うるさい役割」をして、店舗にアドバイスを与えてくれたのです。しかも、そこに本人がいるのですから、面も割れてしまいます。もしかして近所にお住まいなら、どこの誰かもわかってしまう状況のなかで、あえて勇気をもってクレームをつけてくれるのです。
では、目の前で言って、電話や手紙でクレームを上げるお客様は勇気がなくて、ずるいのでしょうか?
決してそうではありません。お客様は、店舗スタッフの目の前でいうことすらできなかったのです。なぜだと思いますか?それは「この店舗スタッフに、何を言ってもわかるはずがない」と絶望したからです。
よく「怒られるうちが花」といいますが、お客様は本当に絶望したら怒りもしません。
今、気づいたことを注意したら直るかもしれないという希望を、少しでも感じるから怒ってくれるのです。
お客様の厳しい声は、経営の神様からの助言だと思いましょう。
一番怖いのは、お客様に何も言われないこと。
「お客様から何も言われたくない」「クレームを極力避けたい」と考えていると、絶対にサービスは向上しません。誰にも指摘を受けないままでは、誰かをずっと不快な気持ちにさせているかもしれません。それでも良いと思いますか?
言われないから気づかないと変な安心感に浸っていると、本当に叱ってくれるお客様を無意識のうちに失っていることになります。
そうなると、これはとても深刻な状況だと言えます。
お客様からクレームを言われたら、ありがたいと感じ、相手を失望させないように心がけましよう。
クレーム対応は原因追及を最優先にしてはいけない
お客様からのクレーム対応の場では、まず事実確認が必要です。クレーマーに揚げ足をとられ大きなトラブルにならないようにするために、事実確認はとても重要です。しかし、よく現場で勘違いされやすいことは、「事実確認と原因追及」を取り違えていることです。
クレームを受けたときに、「なぜ、こんなことが起きたのか? それは誰が悪かったのか?」と、すぐに犯人捜しをはじめる店舗経営者がいます。もしくは、すぐに上司に報告しなければと、犯人を特定に急ぐスタッフリーダーがいます。
例えば飲食業界の現場では、どんなに気をつけても異物混入は起こります。
飲食店での異物混入で一番多いのが頭髪です。
厨房では料理人は帽子をかぶるので混入確率は減りますが、それでもスキンヘッドでない限り、まったく落ちないというわけではありません。また料理を受け取って運ぶフロア係の髪が落ちないとも限りません。外から入ってきたものかもしれないし、床に落ちていたのが舞い上がったのかもしれません。
そして、案外多いのがお客様自身の髪の毛の混入です。しかし、その髪の毛が誰のものであるのか? いつどうして入ったのか? もしかしたらお客様のものではないのか? 詮索しても時間の無駄です。
サービス業に従事する店舗スタッフにとって、お客様に楽しい気持ちで過ごしてもらうことが第一です。誰の髪の毛であろうと料理に混入していたら、お客様は不愉快になります。きちんとお詫びして、急いで作り直してお届けするのが正しい対応です。
たとえ明らかにお客様の頭髪であると思われても、絶対に言ってはいけない。お客様がクレーマーなら話は別ですが、お客様の本心が「ただ、このお店のこの食事を楽しみたいだけ」というのであれば、サービスマンとして、そのためにできる限りのことをするのは当然です。
そう考えれば、原因追及なんて意味のないことだとわかるはずです。
間違った対応と正しい対応
飲食店以外でも雑貨や生活用品の販売店舗で、お客様からその店で取り扱っていないブランドの商品を要望されたら、どんな対応をしますか?
「ここでは取り扱っていません。お客様の勘違いです」と切り捨ててしまいますか?
そんなことをしたら、二度とそのお客様は自分の店舗に足を運んでくれなくなります。ご近所の方なら「あのお店は意地悪だ」と言いふらされてしまうかもしれません。今はSNSもあるのでネットで拡散されてしまうかもしれません。
そうなってから後悔しても遅いのです。
お客様は、この店舗なら私の欲しい商品を置いているはずと思って、わざわざ足を運んでくれたのです。期待をしてくれていたのです。
正しい対応は、その商品を取り寄せできないか? お急ぎなら近くで取り扱っている店舗がないか探して案内して差し上げることです。
なんとかして「お客様の役に立ちたい」という姿勢で接客をすることが重要なのです。
その態度でお客様も「欲しいブランドの商品は無いみたいだけど、似た商品であなたのオススメするものを買いたい」と気が変わる可能性もあります。またその対応がお客様にとって好感触なら口コミで拡散してくれる可能性も大きいのです。
店舗の発展を望むなら、そんな小さな対応の積み重ねを大切にしなければなりません。
以上「言いたいことを言ってくれるお客様は本当に神様なのか?」でした。