アルバイト店員として働き始めた店舗の仕組みが気に入って、ここで一人前になりたいとそのまま社員になるケースがあると思います。仕事をする上で、一人前って例えると、どのようなレベルになれば一人前と言えるのでしょうか?
一通りの基礎ができれば一人前なのか? 一通りの仕事を経験したら一人前なのか? 設定した売上を上げることができれば一人前なのか?
店舗スタッフの一人前とはどんな仕事ができる人か、一人でいくらの販売ができる人かを尋ねると、個々バラバラの答えが返ってくると思います。
このように一人前のレベルの設定というものは、個人で設定した極めて主観的なものであり、それぞれの店長ごとに違うのです。
これでは、チェーン店の場合に育成される側のスタッフは、配属された店によってその後の成長が違ってしまうことになります。
このような話はスタッフ間にすぐに広まってしまうので、決まった配属先による仕事のモチベーションも違ってきます。もしスタッフが「はずれクジを引いてしまった」と感じてしまえば、店舗の定着は望めなくなります。どうすればいいのでしょうか?
スタッフとしての一人前レベルを明確にする
最初に考えなければならないのは、スタッフとしての一人前の条件とは何かを整理し、管理職者全員(もしくはスタッフ全員)が共通認識として共有すべきです。
店舗スタッフにも、主任や部門長などいくつかの役職がある場合には、その役職ごとの一人前レベルを整理するとよいでしょう。
それらが整理できたら次に、一人前レベルになるまでの期間をどれくらいにするかを設定します。これも、店長ごとに考えが違うことが多い。
自分の教わった経験をそのままなぞらない
どこでもよくあることですが、店長は自分が入社し業務を教わった経験から、自分と同じような手順、期間で育成をしようとしがちです。
つまり、この仕事で一人前になるには3年かかると言われ育てられた店長は、自分の部下にも3年かかると言い、自分がした経験と同じ経験を部下にもさせようとするのです。
しかし、自分が入社した時よりも店舗も成長し、また仕事の環境も整備され、店舗を取り巻く環境も大きく変わる中で、過去の自分と同じスピードで育てていいわけがありません。
店舗の生産性を上げるには、今まで一人前になるのに3年かかっていたのなら、それを2年に短縮します。業務を覚えるのに6ケ月かかっていたものは、3ケ月に短縮するという発想が必要です。
つまり店長や管理者の経験の中で、無駄なことを教わったり、自分ならこれが知りたかったということがたくさんあるはずです。
だから自分の経験をブラッシュアップしていけば、ゆっくり教えたとしても教育機関の短縮は可能になります。
そのためには管理者にも教育方法を考えて実行できるように、店長は彼らが自由に相談できる体制を整えて、動きやすくしてあげることです。
店長、管理者にとって、その新たな設定期間でマスターさせるには、何をどう教えればいいのかを考えることが計画的な人材育成になり、自身の仕事のクオリティもアップしていくはずです。
忙しい時こそ計画的にトレーニングする
トレーニングするというと、仕事に影響しない時間を見つけて行おうという人がいますが、忙しいイベントや催事はトレーニングの絶好のチャンスと捉えなければならない。
一人前に育てるために教えるべき項目が整理できたら、項目ごとにいつトレーニングするかまで決めなければ、なかなか計画通りに育成ができません。
店長の中には「今は忙しくて教える暇がない、もう少し落ち着いてから」とついつい、部下のトレーニングを後回しにするタイプの人もいます。
そのような店長が経営する店舗では、優秀なスタッフが育たないので、発展が見込めません。そんなタイプなら、今すぐ考え方を改めましょう。
なぜならば教えるべき項目の中には普段はあまり発生しないが、イベントや催事の時に発生する業務もあります。
計画的に事前トレーニングができていれば、そのイベントを実践の場として活用できるのに、場当たり的な育成しかしていないと、いざという時に、まだ教えていないからと実践のチャンスを逃してしまうのです。
仕事は現場主義といいますが、スタッフ教育も現場主義という考えを持ちましょう。
現場でトレーニングすることに不安もあるかもしれませんが、教えられる側はもっと不安と緊張でいっぱいのはずです。
だからこそ、そのスタッフの本質が理解できたり、長所や短所が発見できるというものです。そうなれば、トレーニング中に何をどう伝えればいいのか? 何をさせればいいのかが、現場で次々とアイデアが生まれてくると思います。
ゴールデンウィーク期間中の繁忙期までに、全商品の在庫の場所、補充のルール、陳列方法をマスターさせるなど、数ヶ月先の店舗の状況を予測し、いつ頃から忙しくなるのか、それに合わせて事前に何を教えておくべきかを計画し、スタッフの個性を見極めながらトレーニングすると良いでしょう。
以上、「どうなれば一人前なのか?新人店舗スタッフ定着のための計画的な人材育成」でした。