お客様に愛してもらえる店舗にするために、お客様にとって喜ばれるサービスを欠かさないようにする。
こう言えば立派ですが、果たしてお客様はサービスを受けるだけで満足するのでしょうか?
時には過剰なサービスが、単に経営者の自己満足に終わってしまうことがあります。
お客様にサービスをする喜びとは?
自分が誰かの役に立つこと、自分の存在が誰かを癒せること、この喜びは人が生きていくうえでとても重要です。
この精神は、接客と店舗サービスの基本的な心構えであり、飲食店に限らずどんな店舗でも同じです。
店舗は、お客様によって育てられるといいます。
同時に、お客様も店舗によって育つともいいます。
来店しているお客様を観察していると、この店舗がどんな店舗なのかが、想像できると思います。
良い常連客を育てることが店をランクアップさせる
例えば、ガード下の小さな飲み屋があったとします。
そのお店は、隠れた銘酒を置いているので人気で、いつも常連さんでいっぱいです。
そこに初めて来店する二人組が訪ねてきましたが、満席だったので「ああ、満席だね、残念・・・」その二人が帰りかけたとき、常連さん中からすぐに席を立つ人が現れます。
「ここ、どうぞ。俺ちょうど帰るととろだから」いま来たばかりでも、そんなことをいって席を立ってしまいます。
店主も、「Aさん、悪いね。ありがとうね」ですませてしまう。
店にとってAさんは最高の上客ですが、Aさんとしても上客でいることが喜びなのです。
自分がその店を好きだから、自分も一緒になってその店を盛り上げたいと思っているし、店主にサービスしたいと思っています。
飲み屋に限らず、こういう「サービスしたいお客様」は案外多い。
逆に常連客を優遇するという意味で、ときどき間違ったサービスをしている店があります。
「カウンターの一番右は、山下さんの指定席」などと言っている店です。
もしその席に他のお客様が知らすに座ってしまうと、あたりに気まずい雰囲気が流れるようなところは最悪です。
そもそも、本当の上客であれば、こんなことは望まず、本当のサービスを知っている店ならこんなことはしません。
はじめてのお客様に、肩身の狭い思いをさせるような常連優遇のサービスをしてはいけません。
店舗にとって常連客は大事ですが、そこに絶えす新規のお客様が入ってくださり、そして新規のお客様がまたいい常連さんになってくれるというサイクルを作るが理想の店舗経営です。
お客様の協力無しに良い店にはならない
リッツ力―ルトンなど一流と呼ばれるホテルには、非常に優良な常連客を多く持っています。
特筆すべきは上客であるほど、彼らはひっそりと滞在を楽しんでいて「常連然」とした振る舞いはしません。
レストランで一番眺めのいい席を独占したりもせず、静かに穏やかに振る舞っています。
そんな一流ホテルと比べられてもって思う店長がいるかもしれませんが、お客様の協力なしには、いい店舗経営はできないということです。
こちらが一方的に質の高いサービスをしても、お客様は、それを受けているだけの存在ではないということに気づく必要があります。
ちょっと自分には縁のなかった店に入った時に、「ちょっと自分は場違いだな」って感じたことはないですか?
もしその店が気に入ったら、外見も内面もその店に相応しい客になろうとするはずです。
ここに気づくと、サービスの幅が一気に広がっていきます。
店の雰囲気も、よりレベルの高いものになっていきます。
まさに店とお客様が、互いにいい方向に育て合える空間が誕生するわけです。
一流の接客サービスが、ときにお客様に甘えるのも、ここを理解しているからです。
お客様に甘えるというのは一朝一夕でできるものではありませんが、甘えることこそ本当のサービスにつながることがあるのです。
あなたの店舗のお客様のなかにも、あなたにサービスをしたがっているお客様が大勢いるはずです。
そんなお客様を見極めて、ときには「サービスしてもらうサービス」ができたら最高です。
以上「優良顧客を育てる接客とサービス」でした。