職場で働くアルバイト店員やパート店員、派遣社員にはその店舗の目指しているものや、事業に対する姿勢というものは通常は伝えられないものです。
だから正社員と違って、仕事に対する考えが甘くなったり、勝手な行動を知らずにしてしまったりすることがあります。
採用難の社会背景があるからこそ、採用の判断基準を甘くするのではなく、この店舗で働くことの意味や、社会で働くことの意味をきちんと伝える必要があります。今、これだけバイト店員による迷惑行為が続いているのも、自分たちがただ単にお金欲しさにのみ働いているという意識しか無いからです。そしてInstagramやTwitterに拡散するのは、自分たちの存在を認めてほしいという承認欲求が高いからです。
働く現場の意識が1つになれば売上アップの原動力にもなり、その意識の高まりが職場環境でさえも良い方向に変えていきます。
そこで役立つのが「クレドツール」です。
「クレドツール」を作成する意味と内容
スタッフに仕事や店舗への誇りを持たせるためには、まず仕事に対するマインドや店舗のスタッフとしてのマインドを共有することから始めると良いでしょう。
仕事に対するマインドというのは、自分達の仕事の価値、素晴らしさであり、自社のスタッフとしてのマインドとは、創業時から現在まで、どんな思いや姿勢で顧客に貢献しようとしているのかを知り、それを実践する一員であることを自覚することです。
この仕事や自社のスタッフとしての共通のマインドを共有するツールとして「クレドツール」を作成し、活用すると良い。クレドツールには以下の内容を盛り込みましょう。
①自社の創業時の思い
どんな思い、発想で創業したのか、何を実現したいのかなど。
②自社の理念
どんな企業を目指すのか、顧客に対してどのような貞献をしたいのか。
③自社のスタッフとして必ず実践すること
あの店のスタッフは、誰もがいつでも実践していると顧客に認識していただきたいこと。
④「クレドツール」作成の表現上のポイントは次の2点
①文字数を少なくする
②絵や図などビジュアルで訴える
つまり、読むより、見せることを重視し、気軽にページをめくるように仕向けるのです。絵やイメージでスタッフの意識に植えつけ、「確か、クレドツールに書いてあったな」と何度もそれを確認することが大切です。
店長の側で考えればついあれもこれもと表記したくなって、結果的に説明書のようになってしまいます。
しかし、クレドツールは仕事の説明書でも無いし、ルールマニュアルでもありません。
あくまでも仕事観のイメージを短い文字数で、覚えて活用してもらうものです。
クレドツールの例
【◯◯◯(店名)スタッフハンドブック】
〇〇〇は、美味しいものを手ごろな価格で、しかし、味とサービスに妥協はしないという発想で生まれたファミリーレストランタイプの店舗です。
私達の提供する「食事」と「サービス」でお客様の「お腹」と「心」を満腹にしたいというのが私達の心からの願いです。
キッチン、ホールのスタッフ全員が協力しあってこそ、この願いが叶えられます。ぜひ、あなたも一緒にこの願いを持ってください。
そして、この願いを叶えてください。これが、〇〇〇のスタッフです。
【◯◯◯(店名)の理念】
お客様に「美味しかったよ!また来るね」と言ってもらえる企業
スタッフに「仕事が楽しい」「ここよかった」と言ってもらえる企業
地域のみなさまに「あってよかった」と言ってもらえる企業
実際のクレドツールの作り方
クレドツールは、スタッフ参加型で作るもの
クレドはスタッフ参加型のボトムアップにより作成される事例が主流となっています。ES向上、離職率の低下、スタッフの意識改革、組織の風土改革といったクレドの社内的メリットがより強く意識されるようになってきていると考えられます。
スタッフ参加型で作成する場合、①クレドプロジェクトのキックオフに始まり、②クレドプロジェクトチームの発足、③優良顧客へのインタビューやアンケート調査の実施、④クレドの文言の作成、⑤クレドツールの作成と配布といった手順を踏むことが一般的です。
①キックオフ
クレドを導入する目的、店長の考え、スタッフにとってのメリット、作成のプロセスに個々のスタッフ力、どのようにかかわっていくか、求められるか等について社内に発信します。発信の手段としては、説明会、ワールドカフェのような参加型イベントにするものもあります。
②プロジェクトチームの発足
各職場の代表を集めてプロジェクトチームを作る。クレド作成の工程と日程、チームの発足メンバーの役割分担などについて話し合って決めます。
③インタビューやアンケート調査の実施
顧客、スタッフ、取引先、地域社会、株主など、クレドの対象とするステークホルダーを決定し、任意のインタビューやアンケート調査を行い、店舗の在るべき姿、今後求められる姿、改善を要すること等についての意見を幅広く集めます。そこからキーワードを抽出し、クレドに盛り込む。
④クレドの文言の作成
プロジェクトチームが中心になり、クレドの文言を作成します。実現可能なクレドとするために、トップや他のスタッフの意見を参考にし、場合によっては外部の専門家の助けを借りる。
⑤クレドツールの作成と配布
クレドの文言が完成したら、スタッフ及ぴ協力店舗等にクレドツールを配布し、常に携帯できるようにします。
クレドツールの浸透のさせ方
スタッフに携帯させる
社内にクレドを浸透させるために、クレドを印刷した名刺サイズのカードを配布し、周知徹底を図るところが多くなっています。
また、朝のミーティング時にクレドの文言を全員で唱和する例や、その日の担当スタッフがクレドをテーマにした3分間スピーチを行うといった行事を恒例にしている例もあります。
ホームページを使って外部にも公開する
外部に対してはホームページのほか、店舗案内パンフレット、株主向けの年次報告書等の広報ツールにクレドを掲載したり、本社の受付の目立つ場所に掲示するなどして、企業イメージの向上を図る例が見られます。
また、求人媒体などにクレドを掲載する例もあります。長期的に働くことを考えている人は、企業理念や社風などに着目する傾向があり、クレドの内容に共鳴して集まってくる優秀な人材の確保につながると期待されます。
クレド診断調査を実施して定期的に見直す
毎年1回程度、クレドの浸透状況や見直すべき項目がないかを判断するために、調査を行うことが有効であると言われています。そのときの調査項目としてスタッフに投げかける質問項目としては、下表のようなものがあります。
クレド診断調査の質問項目
・クレドに基づいた行動が行われているか
・改善行動が社風として根付いているか
・スタッフ間のコミュニケーションは良くなっているか
・管理職は、クレドの実行を支援しているか
・CSを向上させることができたか
・ESは向上したか
・職場環境は良くなってきたか
・変更したほうがいいクレドの文言はないか
以上、「仕事への気持ちや姿勢を共有するクレドツールの作り方」でした。