店舗経営者として、店長として、スタッフの評価と時給制度のポイントを、どのように設定していますか?
新人に限らず既存スタッフのやる気を引き出し、仕事上でチャレンジできる環境を与えることは、スタッフの定着を促進しますが、そのためにいちばん効果的な方法は何でしょうか?
その環境を作るためのいちばん分かりやすい方法は、評価制度と時給制度のシステムです。
大企業なら普通にある制度だと思いますが、中小企業ではなかなか評価制度まできちんと整えているところは少ないもの。店舗となると、スタッフの入れ替わりもよくあったり、社員、パート、アルバイトなど契約条件も違ったりするので、なかなか評価制度まで手を付けられないというのが現実ではないしょうか。
「そんな制度を作って運用しようとしても、人員の入れ替わりも頻繁にあるし、追いつかないし、評価する時間がもったいない」と、そういう声がたくさん聞こえてきそうです。
でも、今の状態を続けていても店舗の将来性は望めないと思いませんか? 本当は将来的な経営も考えながら、なんとかしたいというのが本音ではないですか?
もしも評価制度があればスタッフ各自の目標が明確になったり、自分の現状がよくわかるので、自己改善もやりやすくなります。
またそれによって、自分がなぜこの時給なのか? 何を改善すれば時給アップに繋がるのかがスタッフ個人も理解しやすくなりますし、経営者もスタッフの個性が明確になって育成がやりやすくなるはずです。
スタッフの評価制度と時給制度を運用するための3つのポイント
①納得性
どうすれば時給が上がるのかの基準が示されていれば、納得できる。また、自分と他人の時給差についても納得できる。
②単純・明瞭
評価項目がわかりやすいこと。評価や時給決定までのプロセスが単純で理解しやすいこと。
③連動性
スタッフの時給アップと客単価アップ、客数アップ、生産性アップが連動すること。
例えば、時給が50円上がるということは、1ケ月100時間勤務するスタッフであれば、月5000円の給料アップになります。時給アップするには粗利益を5000円分以上増やせるような接客力、販売力、スピードが身についていなければならないということです。
評価・昇給の頻度と適正なタイミング
これら3つのポイントを踏まえて、評価項目、時給体系、昇給条件を作成しスタッフに提示すればよいと思います。
時給体系については、コース(働き方)別・等級別の体系にするとよい。
また、評価の頻度は、最低でも半年に1回、等級の低い時期は3ケ月に1回、毎月など頻度を増やしてもよい。
昇給の頻度についても、年に1回、等級の低い時期は評価の頻度に合わせて3ケ月に1回などとしてもよい。
入社後1年間の定着率を向上させるには、等級の低いうちは評価や昇給の頻度を上げるのが効果的です。
スタッフの資格等級による評価項目
■規律・マナー
挨拶・返事
◎1・2等級スタッフ
接客8大用語、レジ6大用語を声に出して言える。店内、バックヤードで作業をしていてもやまびこ挨拶を実践している。
◎3・4等級スタッフ
誰に対しても公平に挨拶、返事ができ、気分によるムラかない。
◎5・6等級スタッフ
ピーク時や売り出し中に積極的に声かけを実践し、自らリードして店全体の活気づくりを行っている。
良い表情
◎1・2等級スタッフ
やわらかい明るい表情でお客様と接することができる。
◎3・4等級スタッフ
忙しい時や作業中でも感情を顔に出さずに、常にやわらかい明るい表情で売場に立つことができる。
◎5・6等級スタッフ
高度な問い合わせや難しい依頼等の対応時も動揺せず、余裕ある表情でその場を乗り切ることができる。
身だしなみ
◎1・2等級スタッフ
「身だしなみマニュアル」を守っている。店のイメージに調和した身だしなみを維持している。
◎3・4等級スタッフ
マニュアル以外についても当社で働くのに申し分ない格好であること。
◎5・6等級スタッフ
好印象をもたれるように他の社員の身だしなみについても気を配り注意を促すことかできる。
報告・連絡・相談
◎1・2等級スタッフ
スタッフ同士の連絡を良く取り、上司に指示されたことの結果報告を必ずしている。
◎3・4等級スタッフ
指示されたことにヽして自分の考えも加えながら報告・連絡・相談ができる。
◎5・6等級スタッフ
問題点に気づき報告・連絡・相談がきちんとなされている。
本部からの連絡事項が伝わっているか最終確認までできる。
アイドルタイムの有効活用
◎1・2等級スタッフ
店内が暇な時に以下のことを実行している。①商品の清掃②前だし③バックヤードの整理④レジまわりの整理⑤書類の整理⑥商品の整理⑦POPのチェック、メンテナンス⑧什器の清掃
◎3・4等級スタッフ
以下の順位を基本に優先順をつけ実践できる。①冷やす商品、売れる商品から補充する②釣り銭や備品などお客様を待たせない準備をする③ボトル き、前だしなど売れる環を作る④レジの整理、書類の整理など効率アップを図る
◎5・6等級スタッフ
他のスタッフに優先的にやるべき仕事の割り振りかできる。
レジ・カウンター業務
レジ操作
◎1・2等級スタッフ
基本的なレジ操作か正確にできる。帳票が作できる。日常的な釣り銭の準備ができる。レジ日報が書ける。
◎3・4等級スタッフ
釣り銭の準備か的確にできる。(特別な日)お金の誤差の原因が追求できる。
◎5・6等級スタッフ
誤差金の減少、打ち間違いやトラブル減少などについての指導ができる。
お客様の状況に合わせたポジション移動
◎1・2等級スタッフ
レジの込み具合に応じて呼ばれなくても素早くサポートに入ることができる。
◎3・4等級スタッフ
状況に応じたレジ担当者のフォローかできる。
レジに3人以上は並ばないようにしている。
◎5・6等級スタッフ
適確な指示を出すことによリレジの流れをスムーズに運ぶことができる。3名以上のお客様に同時対応できる。
包装・のし
◎1・2等級スタッフ
用途に応じた包装・梱包・くくリ・のしの選択ができる。
◎3・4等級スタッフ
スピーディにかつ見栄え良く仕上げ、お客様に苛立ちや不安な表情が見られることがない。
◎5・6等級スタッフ
お客様の要望に添ってアレンジできる。お客様の相談に対して自信を持ってアドバイスができる。
接客応対
お客様への心配り
◎1・2等級スタッフ
お客様の問いかけには作業の手、足を止めてお客様のほうを見て伺っている。
◎3・4等級スタッフ
「何かお探しですか?」の声かけ、売場変更´のご案内、客単価アップ・買い上げ点数アッツになる声かけができる。
◎5・6等級スタッフ
店内での動き方、商品をさわる回数、目線でちょっと来て欲しいというお客様のサインを感じ
取り、行動できる。
売り場の案内
◎1・2等級スタッフ
カテゴリーレベルの把握ができており、お客様をそのコーナーに案内できる。
◎3・4等級スタッフ
全店で個別単品レベルまで把握できており、売場までお客様をご内している。店内で取り扱っていない商品で自店では扱っている場合は自店の売場をご案内できる。
◎5・6等級スタッフ
案内の機会を利用してお客様との会話ができる。
積極的な接客アプローチ
◎1・2等級スタッフ
試飲や予約商品などについて積極的にお客様に声をかけている。
◎3・4等級スタッフ
新商品、催事商品、季節商品について積極的におすすめしている。
◎5・6等級スタッフ
アプローチにより、購入につながることか多い。
商品説明
◎1・2等級スタッフ
担当外商品については種別におすすめベスト3、担当品についてはおすすめベスト10が言え、基礎的な説明(味・産地・容量・用途)ができる。
◎3・4等級スタッフ
担当商品について価格や味に対しての裏付けができる。
◎5・6等級スタッフ
自部門も含め2部門以上について遂行レベル2が実行できている。
代替品のおすすめ
◎1・2等級スタッフ
商品か欠品、あるいは定番外の場合、入荷日を伝えたり、代替品をおすすめしたりして、「ありません」だけでお客様を帰していない。
◎3・4等級スタッフ
用途、目的に応じた代替品をおすすめできる。
◎5・6等級スタッフ
代替品のおすすめによって購入につながることか多い。
なじみ客づくり
◎1・2等級スタッフ
よくご来店されるお客様を覚え挨拶+アルファの言葉がけができる。
◎3・4等級スタッフ
お客様の個別の情報を会話の中から引き出せる。
◎5・6等級スタッフ
お客様の個別の情報を活用し販売につなげる努力をしている。
商品管理
商品補充
◎1・2等級スタッフ
棚の整理整頓、清掃をしながら先入れ、先出しか短時間でできる。
◎3・4等級スタッフ
時間帯、商品の特性を考慮して優先順位を決めて補充ができる。
◎5・6等級スタッフ
週単位で商品の動向を予測して、補充の段取りの指示ができる。
鮮度管理
◎1・2等級スタッフ
鮮度規準に従いチェックを行い、規準外商品については即マネージャーに報告している。
◎3・4等級スタッフ
商品の消化具合から売れ行きを予測して早めに相談できる。
◎5・6等級スタッフ
売り切る努力をして期限内に売り切る。
売れ筋商品動向チェック
◎1・2等級スタッフ
担当部門の主力売れ筋商品ベスト10を把握している。
◎3・4等級スタッフ
売れ筋商品に関しては、陳列・発注等工夫し、さらに動向チェックしている。
◎5・6等級スタッフ
話題の新製品を本部へ提案したり、他店の売れ筋動向をチェックし、販売に生かしたりしている。
死に筋商品対策
◎1・2等級スタッフ
担当部門で3ヶ月間1個も売れていない商品を把握し、上司に報告している。
◎3・4等級スタッフ
陳列・プライスカード等見せ方の工夫、また他店への交渉等で何とか売る努力をしている。
◎5・6等級スタッフ
1年以上の滞留品がない。
販売促進
商品陳列
◎1・2等級スタッフ
単品ごとに見やすく、手に取りやすく陳列している。
◎3・4等級スタッフ
商品の回転率を考慮して、陳列場所の変更.工夫ができる。
◎5・6等級スタッフ
陳列を工夫することによリ売上アップにつながることが多い。
POPの活用・作成
◎1・2等級スタッフ
POPのない商品には積極的にPOPを付けている。
◎3・4等級スタッフ
商品価値をアピールするPOPが書ける。
◎5・6等級スタッフ
客層・利用シーンをイメージさせるPOPが書ける。
以上、「スタッフ定着率アップのための時給と評価制度とは?」でした。