値引きという言葉は、消費者にとってとても魅力的で、店舗や商品に足を向かせる効果が大きい。
在庫処分セールや季節の変わり目のセール、野球やサッカーなどの優勝セールなど、値引きセールは、イベントとしても集客率がとても高いもの。
大手スーパーや商店街単位で行うなら良いのですが、店舗独自で値引きを行いすぎると、消費者が店舗に持つ印象が徐々に変わっていきます。
本来は店長が選りすぐった商品の品揃えの魅力で、消費者を引き寄せたいのに、それが価格でしか引き寄せられなくなると、値引き販売をしていない通常時は、客数が少なく売上も少ないという事態に陥る可能性があります。
店長は、常に安易な値引きに走らずに、利益を確保できる、継続して売上が増加するような戦略的な値引きを行う必要があります。
その値引きというものを、今回は考えてみましょう。
値引きが店舗の利益を圧迫することを数値で理解する
「値引き」は、集客や販売促進に重要かつ最も効果的であり、競合状況、市場動向に合わせて戦略的に行う必要があります。
しかし、安易な「値引き」は、店舗の営業利益を大きく圧迫することを「数値」で理解した上で、戦略的に「値引き」の意思決定をする必要があります。
例えば、
仕入価格70円の商品を100個仕入れ(仕入高7000円)、
販売価格100円で100個販売(売上高1万円)、
1万円―7000円=3000円の売買差益があるとします。
ところが、近隣で同じ商品を販売している競合店が同じ価格で販売していたから、10%値引きをして90円で販売することに決めたとします。
もし「仕入価格」も下がらず、「販売数量」も増えないなら、利益は2000円に減少することになります。
つまり値入率30%の商品を「10%値引き」するということは、粗利益を3分の1に減少させてしまうことを意味します。
これはその商品が想定以上に売れてくれれば、利益増が見込め、値引きの価値がありますが、思うように売れなかった場合は、不良在庫になるか、さらに値引きを迫られて利益が見込めなくなってきます。
同一商品で、値引き前と同額の利益を確保しようとするなら、売上数量を150%に増やさねばならない計算になります。
単純に、目先の利益のことだけを考え、売上数量を150%に増やすことができないなら「値引き」をしないほうがいいことになります。
この事実を「数値」で、しっかりと把握している現場スタッフは、意外に少ないといいます。
租利ミックスと仕入原価の抑制等で粗利確保
仮に、一律10%の値引き販売をするとします。
元の粗利益額を確保するためには、元の粗利益率が25%の商品であれば167%、粗利益率20%の商品であれば200%に売上数量を増やす必要があります。
現実には、値引きによる粗利減少分を、売上数量増加分だけで補うのは困難です。
しかし、大型スーパーの進出などの激しい競合状況や、消費者の低価格志向等の市場の変化を考えれば、従来の価格設定で、今の売上を維持し続けるのもまた困難です。
そこで重要になるポイントは
『戦略的に「集客商品」と「粗利商品」の粗利ミックス』
『仕入原価の抑制』
『ローコストオペレーション』
ハンバーガーで有名なマクドナルドでは、「低価格」を全面的に打ち出していながら、セットメニューやサイドメニューで、しっかりと粗利益を確保しています。
また、大手小売業は、バイイングパワー(大きな販売力を背景とした大きな購買力や仕入れ力のこと)を背景に仕入価格の抑制、PB商品開発を行い、しっかりと利益を確保しています。
「競合店が価格を下げている」「値下げをしないと売れない」から「仕方なく値引き販売する」、するとどうなるのか理解されているでしょうか?
戦略無しに無理に値引きを実行すると、どんどん利益が減って店の経営を要化させるだけです。
「値引き」をする際には、そのリスクを数値で把握して、
①粗利ミックスと販売ストーリー
②仕入原価の抑制
③ローコストオペレーション
これらを販売計画に落とし込んで、実践していかなければならない。
<値引き販売をしても利益を減らさないためには…>
利益の減少を補うための数値計画と具体的対策の検討と実施
◎売上数量アップのためにできることを考える
宣伝方法やディスプレイなどを工夫して、それによって商品が何個売れるのか?何パーセント増加するのか、数量を想定することが大切です。
◎売上原価を抑制する
商品開発や仕入れ交渉等により、いかに原価を抑えられるか?を粘り強く考えること。
◎販管費削減
販売上の無駄を無くして、いかに効率化するか?を考えること。
さらに、値引きした商品に関連した商品が合わせて売れるような仕組みづくり、お客様の興味を引きつけて、ついで買いを誘うような工夫ができれば良いと思います。
以上、「安易な値引き」と「利益確保」に走れば店舗経営は破綻する?」でした。