これまでアルバイトやパート社員として働いている時に「この職場でもっと働きたい」と思った理由を考えてみてください。
どんなに働く条件が良い職場でも、長く勤めたい、ここで実績を積みたいと思う動機は、自分がこの店舗で必要とされているということが実感できたときではないでしょうか?
職場の上司や先輩やお客様からの「あなたが必要だ」というメッセージほど、スタッフの心に響く言葉はありません。
多くの人は、自分が顧客や店の仲間から必要とされていることを実感すると、その相手のためにもっと役に立とう、頑張ろうという気持ちが湧くものです。
だから店長は、スタッフ一人ひとりに「あなたは必要とされている」というメッセージを日頃から伝えることが必要です。
そんなことをわざわざ言葉に言う必要が無いのでは? 想像すればわかるでしょ? と思っているなら大きな勘違いをしています。
現代人、特に若者ほど昔と違って、「想像力」が弱っています。今の時代は何でも具体的に説明しないと、相手は理解をしてくれないのです。テレビのバラエティ番組でさえ、字幕が入り、映画もアニメもマンガも日本のものは、とても説明が多くて分かりやすい反面、人間の想像力を奪ってしまっているのです。
そんな環境で生きている人には、「言葉にして具体的にはっきりと伝える」ということが、とても大切なのです。
例えば、次のような言葉がけがそれです。
「いつも助かっている」
「感謝している」
「明日もよろしく」
「○○さんがいるから安心だ」
日頃からこのような言葉をかけられていると、スタッフは自分の存在が認められ、また人の役に立っていることが実感でき、もっと意欲的に店のスタッフや仕事に関わろうとするのです。
「認められる」ことが何よりも働く意欲を向上させる
例えば、「今週末から周年記念セールが始まり、朝から相当忙しくなると思うけど、○○さんがいてくれるから心強い!」と店長からスタッフに声をかければ、声をかけられたスタッフは、「私はあてにされている、必要とされている」という気持ちを持つはずです。
あるいは店長からスタッフの家族宛に暑中見舞いや年賀状を出し、「いつも店のためによく頑張ってくれています。助かっています」ということを家族に伝えることもできます。
また、顧客と感動を味わう場を設けると、直接顧客の声を聞くことができ、先の事例と同様に「自分は必要とされている」「役に立っている」ということを実感することができます。
これらは言葉を変えれば、従業員満足の条件のひとつだと言えます。
納車式で顧客にサプライズプレゼントをしてみたら…
ある中古自動車販売店では、販売した自動車を顧客に引き渡す際に、店舗の全スタッフで納車式を行っています。
販売スタッフだけでなく、店舗で事務をしている社員も納車式には参加します。
車というものが、その顧客の生活にどう関わるのか、どんな新しい生活が始まるのか、期待に胸をふくらませている顧客の気持ちに共感するのです。更に、顧客ごとに考えた品物をプレゼントもしています。
接客中の会話から、その顧客が喜びそうなものを選び納車式でプレゼントすると、顧客は思いがけないプレゼントに驚き、自分のために店のスタッフがわざわざ品物を選んだことに感動します。
顧客と感動を共有し、直接顧客から感謝の言葉をいただけると、スタッフ本人のモチベーションも上がるのです。
また店のスタッフ同士で、「サンキューカード」を渡すことにしている店舗もあります。カードを入れるボックスを作り、スタッフは何校でも自由に、自分以外のスタッフにそのサンキューカードにメッセージを添えてボックスに入れることができるのです。
「○○を手伝ってくれてありがとう」「いつも早く出勤し、駐車場のゴミ拾いをしてくれて感謝」など、スタッフ同士が認め合う、感謝し合う場を設けることでお互いの存在価値を確認し合えるのです。
自分という存在が、店舗にとってどんな存在価値をもっているのか?
お客様から見てどのように映っているのか? 同僚からはどう見られているのか?
なかなか口に出しては言えないことでも、カードにしたためれば伝えやすいと思います。
以上「自分が必要とされていることを実感させれば、スタッフの定着率は安定する」でした。