不景気時の店舗経営は、後倒しの集客を大切して売上げを維持すること

好景気の時は残業が多く給与も賞与も期待できるので、消費者の財布のヒモも緩みがちです。
ボーナスの使い道でも、早めに買い物の計画を立てるので、売り手側も「1ケ月1万円のご負担で、憧れの宝石を身につけませんか」とか、「上得意客様だけの冬の大特招会」など、顧客の購買意欲をかき立てるDMやチラシを6月や12月の第1週に集中して打つと効果がありました。

でも景気には波があるというのが社会の法則です。
特に現代は日本が好景気であったとしても、世界のどこかの国が不景気になればその影響が必ずあるものです。
もし不景気になったら? という意識を持って社会の動向をみて店舗経営をしていきましょう。

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社会が不景気に傾き始めたら現れる現象

社会が不景気に突入してしまうと、例えば年末商戦の様相が一変することがあります。
具体的に言うと、12月は例年第1〜2週に「上得意客向けの催事」を行い集客をしているところが、12月第3週の20〜23日、第4週の27〜28日が前年対比で伸び率が高くなったという。
これは、給与所得者が「賞与をもらってみないとわからない」と言う通り、実際に使える金額が把握できないと購入できないからです。

昔はクレジットカードを持っているとつい買いすぎてしまうという現象が問題になったことがありましたが、さすが長い不景気を経験している人々は慎重で財布の紐が堅いです。

更に、「年末や年明けのバーゲンになればもっと安く買えるのではないか」という消費者心理が、消費の後倒しに拍車をかけるのです。

そう、少し待てば安くなるのがわかってる、バーゲンが恒例行事になっている店舗では、つい買い控えしてしまう気持ちってわかりますよね。

反対に不定期にしかバーゲンをしない店舗では、今欲しいときに買わないと次は無いかもしれないという心理が働くことも忘れてはいけません。

3月商戦でも消費のヤマが後半にずれ込み始め、例年であれば、3月第2〜3週の7〜8日、14〜15日に最初の消費のヤマが訪れるのだが、その年は第4週の週末である25〜28日頃と4月の1〜5日の新学期時に消費が集中し始めた。

例えば、新学期用の子供の体育館シューズは、あるお店では4月第1週の日曜日に集中したため、大変なことになったそうです。
当日は売り切れているにもかかわらず、夕方まで「なんとかならないか」と、問い合わせが殺到したという。

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子供の入学式後にランドセルを買う母親の理由

更に、あるバッグ屋では、入学式が終わった日にお母さんが子供を連れてランドセルを買いに来たという。

思わず販売員が、「もう入学式が始まっていますが、大丈夫ですか?」と心配して声をかけると、お母さんは驚くでもなく、「入学式が終わっているから、「もっと安くなっているんじゃないかと思ってやって来た」と落ち着いて答え、散々粘った挙句、表示価格から更に3000円引きで買っていったそうです。

これもカレンダーが年末年始を過ぎてしまうと安くなるから、きっとランドセルもそうだろうと考えたのでしょう。
しかし印刷物では無いので、ランドセルは通年販売できる商品です。
売り出しの時期が過ぎたからといって、大幅に安くできるものではありません。
そのことをお客様にそれとなく伝える方法を何か考えて、ランドセルの買い換えに繋げるのもいいかもしれません。

このように、不景気になると、お客様は受け取った給与や賞与からローンや光熱費・生活費を払い、残ったお金で買い物をするので、消費がギリギリまで後回しにされるのです。これを消費の後倒しと言い、不景気時には販促スケジュールも、給与や賞与が出た頃をピークとする後倒し政策をとったほうが良いと思う。

では、お盆や暮れ、季節行事にはどのような販促政策が有効だろうか。

その答えは、お盆や年末、新学期など社会行事や季節に合わせたピンポイントのタイトルと商品を訴求することです。

例えば、①もうすぐ新学期セール、②入進学の準備はお済みですか?このように、好景気時は「前倒しの商品政策・販促計画」が有効だが、不景気になると、「後倒しの商品政策・販促計画」を組むことがベストです。

不景気に当たる値引きチラシとは

消費者の買い物の仕方が大きく変化しています。
衝動買いで余分なものを買わなくなり、デザインよりも価格に敏感になったのです。

ある新聞に入ったチラシを見てみると、アパレルのチラシ、スーパーのチラシ、紳士服のチラシ、車検のチラシのどれもこれも価格が強調されています。
例えば、「全品半額」、「エンジンオイル交換999円」、「空前の大破格」、「夏の総力祭・半額セール」などです。
つまり、お客様が価格に敏感になっているので、売り手側も集客のために価格を前面に押し出しているのです。

これは、不景気になってお客様が節約感覚を身につけたため、購入予算が2000円というと1980円までしか出さないし、1000円予算のお客様は、1000円の中でより良いものを探そうとしています。

また、スーパーへ夕方買い物に行くと、黒山の人だかりの列ができています。

理由は、販売員が売場で値下げシールを貼っていると、その後ろにズラーツと列をなして、安くなるのを待っているのです。
更に一旦カゴに入れても売場を一周して、もっと安くならないか、覗き見をしています。
まさに客と店との我慢比べです。

例えば、980円の刺身が780円、580円、500円とマジックで書いたシールが貼られるたびに、お客様は店内を一周してまた戻ってきて、安くなった商品を手に取るのです。
惣菜も同様で、490円1380円1300円と下がる。そこに、主婦だけでなく男性も群がっていき、少しでも安く買いたいという消費者心理があぶり出されます。
ある家庭では、夜8時からスーパーに買い物に行くのが日課になっているという。

このような事例からも、お客様はあくまでも価格と予算で商品を買っていることがわかります。

例えば、ローンと子育てに追われているお父さんの小遣いは2万円と言われています。
1万円は1ケ月の飲み代に取っておくとしたら、残りの1万円は、約20日出勤で1日当たり500円の予算となります。
もしも缶コーヒーや夕刊を買うと、1日のランチ代が300円となります。

つまり、使う金額が限られているため、予算ギリギリで商品を買うようになるのです。
こういう場合、店側としてわかりやすいプライスで、商品の違いを明確化させることが大切です

これからはセレクトした商品でチラシを打つ

従来チラシは、品揃えを見せるためにたくさんアイテムを載せていましたが、現在は、消費者が購買経験を積んだため、結果的にものをあまり買わない時代になってきました。

したがって、これからはお店が「セレクトした商品」に絞って、チラシで打ち出すことが大切になってきました。

また価格を大きく見せたほうがお客様に訴求するインパクトが強くなり、購買につながることはよく言われています。

以上、不景気時の店舗経営は、後倒しの集客を大切して売上げを維持することでした。

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